練習は最後のシーンに取り掛かっているところでした。
休憩に入ったところで、演出、脚本のエレナ・ファノラキスさんと制作の及川晴日さんにインタビューをさせていただきました!
「己の存在証明をぶったてろ」
―劇団はどのようなモチーフで活動なさっているのでしょうか?
エレナ 「己の存在証明をぶったてろ」っていう。これは3月に校内で旗揚げをやったときの企画書に書いたやつで、最初は作品のイメージだったんですけど、気付いたら団体のイメージにもなってましたね。
及川 「娑婆という言葉のように地獄を天国に変えるエンターテイメント性を武器に(娑婆は本来悪い意味の言葉だったが次第に良い意味でも使われるようになった)、虐げられても負けずに暴れる駄馬のように信念を曲げない作品づくりを心がけている」って感じです。
―今作にもそのイメージは反映されていますか?
及川 思ってたよりもファンタジーに笑。
エレナ 三月の作品は暴れ馬が暴れ倒して、飛び出していくぜ!みたいな話だったので娑婆駄馬。
今回の作品は思ったより優しい、前向いて生きてこ♡みたいな話になりましたね笑。
(インタビューを受けるエレナ・ファノラキス(左)さんと及川晴日(右)さん)
作品の3つのテーマ
―続いて作品のことについて聞かせてください。
エレナ テーマは、3個ぐらいあって、一番大枠のテーマとしては、民族と個人みたいな、統一か個かみたいなことですね。
及川 詳しく!
エレナ なんだろう、結構娑婆駄馬のイメージとして、抑圧されてるところから飛び出していく、みんなに馴染まなきゃみたいな風潮をぶち壊していくみたいなのがあって。今作も要は全部を統一しようとしてやってきた宇宙人と、ひとりぼっちのお人形が出会ってっていう話なんですけど。これはなんか、人間は種として生きていかなきゃいけないっていうのが本能としてあるじゃないですか。でも人間にはそれ以外にも知能があるから、精神とか心とか、もっとスピリチュアルでふわふわっとして見えないけど絶対ある心?を持ってて、故に世界を全部平和にしようとするのもうまくいかないし、一つの教室の中で全員が仲良くしようって言ってもうまくいかない。でもそれ当たり前だよな、みたいな。だってみんな違うし、おんなじものだけみて育った人でも、違う考えを持つタイミングって絶対あるし、だから、それがある限り人間は絶対平和にはなれないけど、かといって個人の幸せだけをひたすら追求していくってなっても多分世界は崩壊する笑。だから結構前作の流れを気持ち的には汲んでいるところがあるんですけど、前作は周りからの同調圧力みたいなものに個人が打ち勝って家を飛び出していくっていう話だったんですけど、それって種的には存続していけない結果じゃないか。で、なんか気持ち的には個人の幸せを私も凄く尊重していきたいっていう考え方だけど、それだけだと多分生きていけなくなっちゃう。から、今回はどっちもを取るというか、お互いに理解を示し合う道ってなんかないかなー?って探り探りテーマに落とし込みたいなーって思った次第ですね。話せば話すほど良くわかんなくなっちゃった笑。
及川 色々考えてって感じですね笑
エレナ 色々考えすぎて、ぐにゃーと無理矢理まとめてやってるって感じです。人間ってなんだろうね?笑みたいな。2つ目はどっから人間なんだろうねっていうのも入れました。色々詰め込みました。思想を。
(役者の山川ひなの(左)さんと千葉蒼依(右)さん。演出家からダメを受けている様子)
―3つ目はなんでしょうか?
エレナ 3つ目が、なんだろう?
及川 愛の形とかだよね?
エレナ あーそうそう、ナイス。愛の形については、ずっと考えてますね。男女ロマンスが多数派である世界で、同性同士が必要以上に絡むとそれを恋愛と解釈したがる人たちがいるじゃないですか。それ自体は別にいいんだけど、恋愛が最上とか、最低とか、そういう順位づけあるの嫌だっていう考え方ですね。相手を大切に思う、相手とずっと一緒にいたいと思う。だから傷つけたくない守りたいとか、逆に傷つけたい殺してしまいたいとか。大切にしたいとかいう気持ちを恋愛ひとつでまとめていいのだろうかって。
―私も思うところはあります…。
及川 共感してくれた笑。
エレナ そうなんですよ!同性同士だと恋愛として描いたとしても「いやあれは恋愛じゃない。」って言われる場合もあって、それも違和感があるんですよ。「恋愛って言ってるじゃないか!」「愛だと言ってるじゃないか!」「恋愛感情がある性欲があると言ってるじゃないか!」って。なのにこの2人の関係は恋愛じゃないって言い出すひとがいるんですよ…。"バカか"と!言ってんじゃん!なんでそれを否定するんだ!って気持ちにもなります。逆に男女で幼馴染とか友人とかそれ以上に大切な存在だと思いあっているとなると、そういう感情じゃないのにすぐ「付き合ってる!」「恋愛なんだ!」みたいな。それに対してバカか!と。
及川 笑笑。
エレナ そうじゃねえっつってんだろ!みたいな。なんかそれを恋愛というフィルターが必ずかかってしまうことが良くも悪くも違和感になるから、そこに対して自分なりにノーを突きつけていきたいなっていうのがありますね。
ー好きとかって難しいですよね。
エレナ そうですね、難しいですね。今回異星人と人形の愛だけど、2人には恋愛感情がないんですよ。それが伝わるといいなーって思います。
異質なものが集団の中に入ってくると、自分と違うなってなった時にみんな反発したくなるし、得体の知れないものとして遠ざけたくなる気持ちが差別とか偏見とか生んじゃうんだろうなーって思ってて。要は相手と自分の違いっていうのがデカすぎて分かり合えないフェーズがあると思うんですよ。でも人間っていう単位でみたら同じだから、そこを掘り下げていったら、溝みたいのがなくなるかなーっていう。話をするっていうのが大事じゃないんですか?って。まとまってない笑。まあそういう気持ちもありますね。違いを知る。有無を言わさず融合するっていうのも抑圧だからやめたいですね。
及川 分かり合えないような人が話し合って理解しあうことが大事ですよーみたいな感じですね。
(写真は役者の池田衣穂さんが演技をしている様子)
最後に
―最後に意気込みをお願いします。
エレナ ちゃんとなんか届くものができたらいいなって感じです。特に同世代に。なんか深いことはわからんけどちょっと気持ち良くなったなっていうのが最低ライン。最高ラインは泣いてもらう。
及川 泣いてもらいたいんだ笑
エレナ グッときてほしいよ笑。グッと!
以上、インタビューでした。
作品のテーマに迫ることを深く教えていただきました。
娑婆駄馬さん、ありがとうございました!
<公演詳細>
娑婆駄馬さん
Bブロック
9/1(木)19:00~
9/3(土)11:00~
9/4(日)15:00~
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