8月中旬。夏の夕暮れに私が訪れたのは、明治大学。今回は「即席麺企画」さんの稽古の様子をご紹介致します。
即席麺企画の稽古場風景
「即席麺企画」とは、明治大学に在学中の小林萌歌さん(3年生)が主宰を務める劇団です。その名前の通り「"即席"の"メン"バーで創り上げるゲリラ演劇企画」というモチーフのもと活動しています。
まず稽古は発声練習から始まります。
役者の大熊望友さん(3年生、写真左)、岡田葉さん(1年生、写真右)に加え脚本演出の小林さん(写真中央)も参加し、各々外郎売を唱えていました。
発声が終わった次はシアターゲームです。
小林さんの頭の中には膨大な数のシアターゲームが記憶されているようで、人数に合ったシアターゲームを次々と提案していました。普段から小林さんが演劇を嗜んでいることが垣間見えた瞬間でもありました。
身体の準備ができたところでシーン稽古に移りました。即席麺企画の東京演劇祭参加作品は二人芝居であるため、役者と演出家、そして役者間で綿密な情報共有がなされていました。
インタビュー
稽古が一旦落ち着いたところで、インタビューの時間を取っていただきました!
即席のメンバーで作られた即席麺企画
―即席麺企画は即席のメンバーを集めて公演を打つと団体だとお聞きしましたが、今回の役者はどうやって集めたのでしょうか?
小林 全員私が声をかけさせていただきましたね。大熊ちゃんは他大の演劇サークル(早大劇研)で活動しているんですけど、大学のゼミが一緒だから顔見知りではあって。彼女の演技を一方的に見ながら、いつか絶対一緒にやりたいなーって思ってて笑。ずっと片想いしてました。その念願が今回叶った形です。葉ちゃんに関しては、サークルの公演に葉ちゃんが出ていたのを観て、一目惚れして、お願いしてって感じです。
―岡田さんとそれまでに面識はありましたか?
小林 いいえ笑。演劇サークルのワークショップで会ったことはあったんですけど、約20人いるうちの1人ってみたいな感じだったので、ちゃんと知り合っていたわけではないです。
―急に話しかけたという感じなんですね。
小林 はい笑。でも誘ってよかったなっと思ってて。役者として見たときに二人とも対応力がすごくて、やる気にもなってくれるっていうのも嬉しいなと思いながらいつも稽古場に行ってます。
―そんな即席で集められたメンバーですが、今回東京学生演劇祭にはどのような意気込みで挑戦しているのでしょうか?
小林 評価していただける環境だっていうのが大きいと思ってまして。学生でやる演劇って身内をお客さんに呼ぶことが基本なので、良かったよっていう言葉をいただくことが多いと思うんですよ。反面、審査って結構厳しいところがあるので、審査員さんに改善点を言って貰えることでより良い演劇が出来るんじゃないかっていう向上心はありますね。悪い意見をもらうのも嬉しくてお客さんが反応してくれるっていうのが演劇で一番好きな瞬間なので、今一番楽しみにしています。
―大熊さん、岡田さんはいかがでしょうか?
大熊 さっき片想いって言われたと思うんですけど、全然そんなつもりがないというか笑。私もずっと一緒にやりたいって思ってて、半年ぐらい待ってて。だから念願の小林作品に出られるっていうのが嬉しいという気持ちと、この団体作って出るってなった経緯や作品のテーマを聞いて、どういう思いでオファーしてくれたのかを知って、それにちゃんと答えられるようにしたいなっていう気持ちで頑張ってます。努力した結果誰かにいいなと思って貰えたら嬉しいですね笑。
岡田 私は、高校のとき部活で演劇をやってたんですけど、大学の演劇の世界は一本サークルの公演に出ただけで経験がほぼなくて。外の広い世界に触れるのが初めてなので、それで単純にわー楽しそーって感じです笑。
大熊 楽しそうって一番大事…。絶対それがある。楽しくないと。
―それでは次に、作品に関して質問させていただきます!今回の作品はどのようなことを足がかりにして書き上げたものなのでしょうか?
小林 一応モチーフとして「100日後に死ぬワニ」ってとこから「ワニ死ぬ。」(東京学生演劇祭参加作品)をとっています。私がよく行く下北のヴィレッジヴァンガードに「100ワニ」のグッズが大量に置かれていたのを見て、あんだけ死ぬまで人気だったのに、死んだ後こんなにすぐ忘れちゃうんだなってちょっと悲しくなっちゃって。私はワニ可哀想ーみたいにはなれない人間なんですけど、でも世間の人の盛り上がりと落ち着きって怖いなーみたいな気持ちで書きました。
意外と?しっかりしている演出家
―ここで、座組みの皆さんの関係性を知れるような質問をさせていただきます。
演出家としての役者2人、役者2人にとっての演出家は一体どのように映っているのでしょうか?
小林 私が結構よく言葉足らずな演出をするんです。ここはふんわりした感じでとか。けどそのふんわりを大隈ちゃんとか葉ちゃんが自分なりに解釈してくれるので、自分の描いたキャラクター以上のものを作ってくれるのが嬉しいです。他の人はもっと的確に表現するんだろうかとか考えながらザックリ言っています笑。
―確かに演習家が言ったことを役者が読み取ろうとしている様子は稽古を見学していて何度か見受けられました。
大熊 あたしは別にザックリだなって思わないと言うか。そんなことないって言うんですけど、ちゃんとしてる。
小林 そんなことないよ(小声)
大熊 笑。指示とかもパッパッパみたいな。ほんとにちゃんとしてるって言葉しか出てこないんですけど、演出って人に指示を出してってことをすると思うんですけど、そういうことが上手い人だなって。他何人と比べてもすごいなって。学校でも、しっかりしたひとだなって思ってたんで。
小林 次呼んじゃおっかな〜笑
―演出家が役者のことを理解しているから的確な指示が出せるんですかね?
小林 ありがとうございます、なんか嬉しい。いや、でもどちらかと言うと演出をしながら役者のことを理解しているという側面の方が強い気がします。私が多分元々めちゃくちゃ人見知りで、演劇を通じてしか人のことをこうグッと踏み込めないんですよ。
私は普段その人が話している時以上に、役作りしている時のその人ってその人が一番見えると思ってて。だから私のこの言葉をどう解釈してくれるんだろうって投げたときに、大熊ちゃんなりのやり方と、葉ちゃんなりのやり方があるって言うのを、私はみて楽しんでいます。役者を理解していると言うよりは、投げてみてそのレスポンスを待っているみたいな。キャッチボールをずっとし続けていますね笑。
―確かに、役者は役に共感することが求められているので、役作りに人柄が出るということはあるかも知れませんね。
即席のメンバーのこれから
―それでは劇団の今後を教えてください。
小林 いや、あたし全く考えてなくて笑。即席麺企画ってものがそもそものコンセプトが、即席のメンバーっていうのが強いので、多分次やるとしても全く違う場所で、違う人とやるだろうし、それがいつかもわからないっていうのがあって笑、ほんとにゲリラにしたいなって思ってます。
最後に言い残したことなどはありますか?
大熊 即席麺つぎは違うメンバーでって言われてるからには、次も出れたいなー。
小林 私へのアピール笑。
大熊 真面目に答えますと、結構やっぱ普段見にきてくださる方とはやっぱちょと違う人が見に来てくださる、例えば、初日の予約リスト見たとき、先生の名前があって。ちょっとそれは背筋が伸びました笑。とにかく楽しんで楽しませていきたいですね。
小林 あっ、さっき言い忘れたんですけど私も楽しませたいですね。他のことは全部言い切りました笑。
岡田 ほんとに、いろんなことが初めてなので、二人芝居もあたしやったことがないし、学校の外の会場でやるのも初めてなので、まだ緊張してないですけど、多分近くになったらすごく緊張するのかなって思います笑。がんばります。
即席麺企画さんは前述した通り、なんと東京学生演劇祭には2人劇で挑戦します。そのため記事にも熱が入ってしまいました…。
以上、即席麺企画さんへの稽古場取材でした。貴重なお話、ありがとうございました!
<公演詳細>
即席麺企画さん
「ワニ死ぬ。」
Aブロック
9/1(木)15:00~
9/2(金)19:00~
9/3(土)19:00~
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