審査員2名より講評文を頂きました。
代表して池亀様より総評を頂いております。
池亀三太(花まる学習会王子小劇場 芸術監督/マチルダアパルトマン 代表)
○総評
「東京学生演劇祭2020」が配信のみでの開催となってしまったこと、大変残念に思います。
それでも劇場での収録を行っている各団体の姿は創作意欲が漲っており、例年同様の熱量が劇場内に満ちていました。
個人的には春頃から乱立するようになった映像配信としての演劇作品に苦手意識があり、なるべく避けながら生活をしていたのですが、今回は審査員という立場もありコロナ禍においておそらく初めて映像配信の演劇作品をきちんと観劇させていただきました。
どの作品も画面越しでも伝わる強固な表現や物語があり、更に映像配信ならではの工夫を凝らした演出をする団体もあり、映像配信では楽しめないのではという個人的な気持ちは杞憂に終わりました。
参加団体にとっては、無観客とはいえ、このタイミングで座組を組んで創作し、劇場に来ること自体が相当な勇気と覚悟だったんだろうと思います。
意図してコロナのことを作品に反映していた団体もあれば、必ずしも団体の意図ではないのかもしれないけど、こちらが勝手にコロナと結びつけて受け取ってしまうこともあり、よくも悪くも今しかない演劇がここにあったと思います。
学生演劇という限られた時間を過ごす中で直面したコロナ禍で、それでも演劇を諦めずに舞台に立つことを選んだ参加団体の皆さんに大きな勇気と刺激をもらいました。
「今しかない」「今じゃなきゃいけない」という切実さがどの作品からひしひしと伝わってきて心が大きく揺さぶられました。
例年より参加団体は減ってしまいましたが、演劇祭に参加すること自体に熱意と覚悟がなければ成立しなかったことで、その熱意と覚悟が作品創作にも反映され、中途半端な作品は存在せず、すべてが各団体の渾身の作品となったのではないかと思います。
ただ、いい作品が揃ったからこそ「やっぱり生で観たかった」と率直な想いも湧き上がりました。今この場所を演者と観客が共有する演劇という表現は、常に今を映し続けるものであると再認識させられました。